しるし

作品紹介

 

泥に埋もれて死んだ生物を含んで、
固まった泥は岩となる。

常に動いている地殻が地を押し上げ、
岩が顕わになる。

大気にさらされた岩は、
雨や風に浸食され崩れていく。

崩れた岩のいくつかから、
岩と一体化したような生物の形が現われる。

 ×

「これはなんの模様だろう?」と思考する生物がそれを見つけ、
それが過去に生きていた生物の形であることを理解する。

 ×

化石がなんであるのかをヒトは知っている。
(私はそのことを知っているといえるのか)

 外側が骨格である生物はその姿形を、
 内側に骨格のある生物はその骨組みを、

岩に印したことをヒトは知っている。
(私はそのことを知っているのか)

やがて化石から生物の全貌が想像され 、重量と骨格のバランスが計算され、立ち姿が修正され、
ヒトの住む時代に見ることのできない生物たちの外形をヒトは現わした。

 けれどその生物の色はわからない。
 その生物の毛の有無はわからない。
(私は色や毛を想像することができる)

刻まれたものを実際に目にし、想像力を使い、そこに意味を与える。

化石となった生物が岩であり続けるのか、ヒトに名づけられる生物となるのか。
そこにあるのは常に偶然だ。

偶然のつながりが――時代を超えてつながり――他者を超えてつながり――生物を超えてつながり―
―思考するサルが必然という言葉を生みだし――生物にあふれる世界の情報に名前をつけていき――
――――――――――――――――――――――シッテオイテホシインダワタシガイキテイタコトヲ

 ○

そして私はあなたが生きていることを喜ぶ
そして私はあなたが生きていたことを喜ぶ

生きることがつらいわけではない
つらいことがあったというだけだ

生きることは孤独なわけではない
孤独という概念を持ったというだけだ

生きることに意味などない
意味など関係なく生き物はうごめいている

生きることに意味が生まれる
思考するサルが「おおそうじゃ!」と驚いて笑う

そして私はあなたが生きていることを喜び
       私が生きていることも喜ぶ

 

画像:とよよん